父母が頭かきなで幸あれて 言ひし言葉ぜ忘れかねつる
和歌原文
ちちははが かしらかきなで さちあれて いひしけとばぜ わすれかねつる
父母が 頭かきなで 幸あれて 言ひし言葉ぜ 忘れかねつる
『万葉集』よみひと知らず
現代語訳
お父さんお母さんが、自分の頭をなでで
「幸せでいなさいね」
と言ってくれた言葉が忘れられないんだ。
鑑賞のポイント
時は755年・・・奈良時代。
「日本防衛のため北九州で3年間警備につく」という税の一種がありました。
それが「防人(さきもり)」です。
この歌は、その防人についた東国(静岡より東・主に関東地方)の人の歌です。
任期は3年だったが、行き帰りは自己負担!
その為、二度と帰れない人もいたそうです。
明日は防人として出発の日。。。
出発前の最後の夜ごはんを親子で食べ、
小さい時の話に盛り上がったり。
でも心の奥にわだかまる別れることへのさみしい気持ち。
そして太陽が昇り、いよいよ出発当日。
「じゃあ行ってくるよ」という息子。
もう二度と会えないかもしれない、
その別れ難い瞬間、
「達者で、幸せであれよ」と
頭をなでてくれた両親
ああ、少し小さく見えた
あの父母は今どうしているんだろうか。
この歌を歌った時、
防人は北九州に向かう途中だったのか。
北九州に着いて海を眺めていたのか。
その心には今も同じ土地で、
同じ日常を送っているであろう父母が
うつっていた。
家族の大切さは、いざ離れるとなると、
妙に胸にこみ上げてくるものです。
大学進学。結婚。就職。
現代でも親と離れる場面が
それぞれにあります。
その時のなんとも言えないさみしさ。。。
このさみしさが
人を少し成長させてくれます。
-今親と離れて住んでいる方。
自分が生まれ育った、あの土地に、
今も父母は生活しています。
自分の生活に精一杯ですが、
たまには親を心に浮かべ、
そっと幸を祈る時間をとりたいものですね。
-これから離れる方
親のありがたみは、
離れてから気がつくものです。
一緒にいられる時間を大切にしましょう!
といっても
なかなか一緒にいると難しいですが。
約1262年前の祖先の方々と現代の私達。
長い時を経ても、
子が親を想う。親が我が子を想う。
この気持ちは共有できるって、
素晴らしいですね!
それも同じ「日本語」で!
同じ言葉を通じて昔の歌を詠んだ方の
心に触れることができる。
これが和歌の素晴らしさ!!
日本に和歌があってよかった!!
心に和歌を!
最後までお読みいただき、ありがとうございます!