八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 八重垣作る その八重垣を
和歌原文
やくもたつ いづもやえがき つまごみに やえがきつくる そのやえがきを
現代語訳
何重にも重なりあう雲が立ち上る ここ出雲に立ち上るのは八重垣のような雲だ。
妻と住む宮にも八重垣を作っているよ そう八重垣を。
※「八雲立つ」は「出雲」にかかる枕詞。
鑑賞のポイント
日本最古の歌
なんとこの歌日本最古の歌です!
詠んだ人はスサノオノミコト
人というよりは神ですね。
この歌の掲載は、『古事記』と『日本書紀』の
神代のお話の部分です。
では、どのようなお話の中で、
この歌が詠まれているのか、
見てみましょう!
歌が詠まれるまでのお話
暴れ者のスサノオノミコトは
姉であるアマテラスオホミカミに
天(高天原)より追放されてしまいます。
スサノオノミコトが辿り着いたのが
「出雲」(今の島根県)でした。
ここでしくしく泣くおじいさんとおばあさん、そして娘に出会います。
どうしたのだ?
わたしたちには八人の娘がいましたが、毎年この時期にやってくるヤマタノオロチに食われてしまいました。ヤマタノオロチは目は赤く、八つの頭、八つの尾を持ち、長さは谷八つ、尾根八つの大きさのオロチです。そして次はこの娘、クシナダヒメの番です。
よし!俺がそのヤマタノオロチを倒したら、娘を嫁にくれ!
いいでしょう!
ということで、スサノオノミコトはヤマタノオロチと戦うことになります。
とはいえ大きな体と8つの頭。
力だけで倒すことは難しい。
そこで8つの門と8つの棚を作り、
強いお酒を置いておくことにしました。
ズルズル・・・スルズル。
地を這う大きな音と共にヤマタノオロチがやってきました。
ヤマタノオロチは酒を見つけると、
ガブガブガブと大きな音を立てて飲み始めました。
とても強いお酒です。
飲み干したヤマタノオロチは
大きないびきをかいて眠ってしまいました。
いまだ!!!
飛び出してきたスサノオノミコトは
ヤマタノオロチに剣を突き立て、
見事勝利しました。
(この時ヤマタノオロチの体から出てきた剣が三種の神器の一つ草薙剣です)
おじいさん、おばあさんは大変感謝し、
約束通りクシナダヒメはスサノオノミコトのお嫁さんになりました。
一緒になったからには、二人で住む場所が必要。
ということで二人の住まいを探す中、
須賀(すが)という場所に辿り着き、
なんとすがすがしいところだ!
とこの場所に家を建てることにしました。
その家が建てられた時に詠んだ歌・・・
それが冒頭の歌です!
歌を味わう
何重にも重なり合う八雲とはどのような雲なのでしょうか?
「八重垣つくる その八重垣を」と歌う自慢の宮は
どのような宮だったのでしょうか?
想像は膨らみますね・・・
見上げれば青空に白い雲。
その下には美しい茶色の映える木の宮が見えてくるようです。
そして、壮大な雲と希望に満ちた夫婦生活。
スサノオノミコトの家庭を持つ男としての意気込みが伝わってくるようです。
大切な人と、住むところを決めて。
仁王立ちで空を眺める。
これが日本最古の歌。
人間らしい、神のお話。
これぞ日本の神話ですね。
前回は防人の歌でした。
(前回ブログは下記↓)
今回は神の歌です。
「歌」は日本人、いや日本神も含めて、日本のみんながよんだもの。
「歌」の世界では神も人(どんな身分の人)も垣根がない!
素敵だなあ。
心に和歌を!ありがとうございます!!