秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかねぬる
短歌原文
秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかねぬる
あききぬと めにはさやかに みえねども かぜのおとにぞ おどろかねぬる
来ぬ:来た 「ぬ」は完了の助動詞
さやかに:はっきりと
おどろかれぬる:ハッと気づかされる
現代語訳
秋が来たことがはっきりと目に見てわかることはないけれど、風の音にハッときづかされるよなあ。
季節の変わり目を感じる(二十四節気、七十二侯)
肌寒さに思わず布団を被った朝、ふと秋の到来を感じたり。
通学路の街路樹から聞こえる蝉の声に ふと夏の到来を感じたり。
自販機にコーンポタージュが並ぶのを見て ふと冬の到来を感じたり。
お昼時セーターの下で汗ばんでいる時に ふと春の到来を感じたり。
日本には「四季」があり、皆さん、ふと季節の変わり目を感じる瞬間があると思います。「四季」は1年を4つに分けていますが、1年を24個に分けた「二十四節気」、更に1年を72個に分けた「七十二侯」というものがあります。「七十二侯」の場合365日÷72=約5日ごとに季節を分類しているのです!今日から5日前と今日の季節の違い。皆さん感じとることができますでしょうか。さあ、このブログを読んでいる今はどのような季節か気になってきませんか?こんなサイトがありましたので、是非参考に今の季節をご確認ください。
今回の短歌は「立秋(りっしゅう)」に詠まれたと伝わっております。立秋とは現代の8月初旬。そう聞くと、少し短歌への印象が変わりませんでしょうか。なにせ8月初旬は夏のど真ん中ではないですか!蝉の声MAX、太陽の光MAX、暑さMAX。確かに「目にはさやかに」秋の到来が見えるはずがないですね。しかし、その夏ど真ん中にふと吹いた風の音から「あっ秋に近づいているかも」と感じたというのです。そんなばかなと思うかもしれませんが、実は私なんとなくこの感じが分かります。たぶん自分が一番好きな季節が夏のため、夏が終わって欲しくないと常に思っているからだと思います。だから、ちょっとした夏パワーが弱まっていることに敏感なんです。これは私の感覚ですが、7月中旬~下旬にかけて夏は完成していきます。ただ、夏が完成した!と思った7月末頃からすぐに秋に向かっているんです。図で表現するとこんな感じ。
ただ、そんなことを昔の人は当たり前に知っており、だからこそ季節を24個や72個に分けているのですね。例えば「二十四節気」で季節をみてみると・・・
5月5日~5月19日頃 立夏
6月21日~7月6日頃 夏至
7月7日~7月22日頃 小暑
7月22日~8月7日頃 大暑
8月8日~8月22日頃 立秋
8月23日~9月7日頃 処暑
※参考:当ブログ上記の「暦生活」WEBページより
ちゃんと5月頃から夏に向かっていき、8月7日頃以降秋に向かっていっている。とあらわされているんですね。
また、季節の変わり目は、五感をフルに活用して感じるものです。今回の短歌でも「目にはさやかに見えねども」と視覚的には何も感じないが「風に音にぞおどろかねぬる」と聴覚的にはっと秋を感じたと表現されています。もちろん聴覚だけでなく、体を通り抜ける風、つまり触覚的にも秋を感じたと思われます。あらためて今の季節を感じたくなってきますね。
昔の方が設定した季節の区分を意識しながら、毎日生活してみると、幸福度がUPすること間違いなしです。そしてできれば自分なりの「七十二侯カレンダー」を作ってみるのもよいかもしれません。例えば「扇風機片付ける」「ユニクロでヒートテックが売られている」などなど。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
心に短歌を!