春すぎて 夏きたるらし 白たへの 衣ほしたり 天の香具山
短歌原文
春すぎて 夏きたるらし 白たへの 衣ほしたり 天の香具山
はるすぎて なつきたるらし しろたへの ころもほしたり あまのかぐやま
らし:~のようだ 推定の助動詞
白たへ(白妙):真っ白な布。「衣」に掛かる。
ほしたり:乾したり・干したり
天の香具山:現在の奈良県橿原市にある山。大和三山の1つ。天から降りてきた山と言われている。
持統天皇 『万葉集』巻一 28 ※百人一首にも選ばれています。
現代語訳
春が過ぎて、夏が来たようです!
ほら、天の香具山にも真っ白な服が干してありますわ。
天の香具山 を見てみよう!
この短歌は飛鳥時代に持統天皇(女性の天皇)が詠んだ短歌となります。飛鳥時代ということは・・・592年~710年。古墳時代と奈良時代の間の年となります。有名な天皇と言えば・・・推古天皇(聖徳太子が摂政)、天智天皇(大化の改新)、天武天皇、そして今回の短歌を詠んだ持統天皇あたりでしょうか。現在の奈良県 明日香村に日本の都があった時代です。明日香村は奈良県の真ん中あたりに位置し、今ではのどかな風景が観光客に人気のスポットです!
では、その天の香具山とはどんな山か。みなさんきれいな三角形の山をイメージされているかもしれません。そこで、まずは天の香具山の情景をイメージできるように、写真で紹介します。
↓
ん?ちょっと近すぎるので、もう少しひいてみましょう。
そう・・・山というよりは「丘」です。これが天の香具山です。標高152.4m
参考 https://www.city.kashihara.nara.jp/kankou/own_kankou/kankou/spot/kaguyama.html
かしはら探訪ナビより
持統天皇は上の写真のような、真っ青な空!深い緑の山!そのような夏の風景を詠んだのでした。この緑と青にめちゃくちゃ映える「白たへの衣」 では次に「白たへの衣」を見ていきましょう!
白たへの衣 を想像してみよう!
一般的にこの短歌は「持統天皇が藤原宮から天の香具山を見た際、香具山に干してある白い衣を御覧になられ、感動して詠んだ歌」と解釈されています。この「白たへの衣ほしたり」には色々な説があります。
・夏の暑い時期に着る「夏服」への衣替えで、村人たちが白い服を干していたんだ。
・神の山に人々が普段着を干すだろうか。これは香具山の神事に関わる人々の服だ。
・そもそも藤原京から干している服なんて見えるのか?山一面に咲く白い花ではないか?
・山にかかる白い雲かもしれないぞ。
色々な説がありますね。
藤原宮から香具山はどのように見えるか気になったので、探してみると、
下記のような写真がありました。↓
藤原宮跡から眺める大和三山 http://small-life.com/archives/13/02/1021.php
これなら肉眼で香具山は確認できます。
ただ・・・
山が低いので雲はかかるのかなあ。この山に白い花が咲く木はあったのかなあ。そもそも白い衣って相当たくさん、それも高い位置に干さないと見えないよなあ。
など色々と考えてしまいます。
そこで、私の独断で下記のような情景を思い浮かべてみました。
香具山の中腹に干されている白い衣を見つけて
「あっ見て!香具山で白い服が干されていますわ。夏服への衣替えの季節ですもんね。
青い空。深緑の山。そしてこの白い衣が干される景色!いよいよ夏がやってきたってわ
くわくしてきましたわ!」
白い服が民衆の服なのか、神事を司る人々の服なのかはどちらかわはわかりません。また、その景色は緑の中にポツンと浮き立って見えたのか。香具山のあちらこちらに干されていたのか。も分かりません。ただ、その色合いのコントラスト。白い衣が干されるということで夏を感じたという季節感。心がすっと晴れるような短歌で、とても好きです!(ただ自分が夏が好きというのもあるかもしれません)
自然は最高の色の組み合わせを見せてくれます。
日々の生活の中で、たくさんの色と出会いたいですね。
そして梅雨明けが待ち遠しく、夏が楽しみです。(本日、梅雨真っただ中)
心に短歌を!
最後までお読みいただき、ありがとうございます!