おいどんブログ

和歌・短歌を紹介します!

何事もかはりのみ行く世の中におなじかげにてすめる月かな

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短歌原文

何事も かはりのみ行く 世の中に おなじかげにて すめる月かな

なにごとも かはりのみゆく よのなかに おなじかげにて すめるつきかな

西行山家集』秋歌

 

のみ:「~してばかり」副助詞 強意・強調

かげ:(日・月・灯火などの)「光」

すめる:「澄める」と「住める」をかけている

現代語訳

全てのことがどんどん変わっていく世の中で、月は変わらずに同じように光り輝いているんだよなあ。

 

短歌を味わおう

  今回も前回のブログに続き西行さんの短歌となります。西行さんについてや、他の短歌については過去ブログを是非読んでください。(このブログの最後にリンクを貼っておきます)

 「何事もかはり「のみ」行く世の中に」と「のみ」を入れることで、何事も変わっていくことが避けられないこと。その無常観をあらわしているように思えます。流転の世の中。それは避けがたい世の常であると。ただ、そんな世の中でふと上を見れば、変わることのない「月」が輝いている。まぎれもなく月の光はこの流転の世の中でも変わることのない不変のものである。「ああ、色々変わっていくなあ」「でもあの月は変わらないなあ」この西行さんの心情のようなことをみなさんも一度は感じたことはないでしょうか。あくせく働く中でふと空を見上げた時の自分のちっぽけさというか、自然や真理の雄大さというか。そのようなことを西行さんは感じたのではないかと思います。

変わるもの。変わらないもの

 世の中とは本当に早く移り変わります。「外国人観光客がたくさん来ている!ホテルの建設ラッシュだ!」「2020年オリンピックイヤーまで日本の経済は盛り上がり、オリンピック後からの勢いの衰退がこわいなあ」なんて言っていたのはほんの1年前。それからコロナウィルスというものが中国で流行っているらしいという話から、いつの間にか日本も緊急事態宣言。当たり前のように朝マスクを着用し、一日に何度も消毒液を手に塗って、観光業は閑古鳥でホテルはガラガラ。オリンピックは延期されて、未だにどのような開催になるか見えない状況。直近でもこれだけ世の中は変わってしまいました。もう少し長い時間軸で見れば、スマホがなかった時代、自分はどのように人と待ち合わせをし、検索していたのだろうか、今となっては思い出せない。更に長い時間軸でみれば、剣を腰に差したお侍さんが普通に歩いていた時代が約150年以上前にあったのです。そして西行さんが生きた時代から約900年。多くのことが変わりました。

 一方で、変わらないものもあります。今回の短歌で詠まれている「月の光」などの自然や人の心です。なぜ歴史は面白く、短歌は今まで残っているのか。それは変わらないものを発見することにより、感動がそこにあるからだと思います。今回の短歌をもう一度詠んでみてください。感動ポイントがたくさんあります。

感動ポイント1「言葉が理解できる」

 この短歌を声に出して詠んでみて、意味を問われれば大体の意味はとれると思います。それは約900年前の人の「言葉」が現代の我々の「言葉」と大差がないということなんです。タイムスリップして西行さんと話をしても、我々はポケトークなしで会話ができるということです。当たり前ですが、言葉が理解できるからこそ短歌は今でも変わらずに原文のまま残っており、我々は詠んだ人の心を感じることができるのです。これって凄いことです!

 そして人は言葉によって思考します。今あなたの感じたこと、考えたことは何語ですか?もちろん日本語かと思います。「ああ楽しい」と感じたとします。その「ああ楽しい」という感じは言葉なしではあらわしようがないですね。「ああ」と「楽しい」という言葉がある為に、我々は「ああ楽しい」という心情と出会えるのです。こう考えて、短歌の言葉一つ一つを是非味わって頂けたらと思います。

 

感動ポイント2「心情が理解できる」

 短歌の味わい方。もっというと歴史の楽しみ方にも当てはまると思いますが、それは昔の方々の心情を感じることです。今回の短歌を詠んだ西行さんはどのような状況でどのような気持ちで月を眺めていたのだろうか。情景を思い描きつつ西行さんを自分の心に重ねてみるのです。「何事もかはりのみ行く世の中」で「おなじかげにてすめる月かな」ということを感じたことは、自分の人生で一度はありませんか?それは月ではなく、太陽なのか、変わらない自然の風景なのかもしれません。そのあなたの気持ちと西行さんの気持ちが重なることで、短歌はあなたの心にすっと沁みわたっていくのです。字面だけ詠んでも何も面白くありません。共鳴を楽しむのです。

 そのためには1つのことを信じて欲しいです。それは「他人と自分は共通の心を持っている」ということです。うれしい、悲しい、楽しい、悔しい。これらの心は全員が共通に持っています。それは時代も関係ありません。卑弥呼西行さんも自分も共通の心を持っているのです。だから、西行さんの短歌を詠み、自分が感じたこと。それが西行さんも感じたことと信じ切ってください。「自分はこう思うけど、西行さんはどう思ったかは分からない」と思うと短歌や歴史は自分に近づいてきてくれません。自分と他人は時代や空間を超えて共感できる。この前提に立つと、他人の短歌にも感動が生まれきます。

 

 我々はどうしても変わりゆくものに目がいきがちです。それはそれで大切ですが、たまに移り行く世で変わらないものにも目を向けてみてはいかがでしょうか。この短歌ブログもあなたの人生の変わらないものに目を向ける時間の一助になれば幸いです。

 

心に短歌を!

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

 

過去の西行さんブログはこちら

 

 

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